って、参加されたことありますか?
先日、偶然近所で表記シンポジウムの広告を見て、何となく興味を引かれて行ってきました。私は一会社員で管理職でもなんでもないですが、こういう一般に開かれた講演会のようなものは参加したことが無く、どんなもんなんだろう、という興味です。
調べてみると、11月は「過労死等防止啓発月間」として厚生労働省が定めており、各都道府県にて周知、啓発がされているようで、このシンポジウムもその取組の一環のようです(”働いて働いて働いて参ります”の高市さんとは相いれない活動ですね)。少し突っ込みとしては、過労自死を抑制するための啓蒙活動に、過労自死を起こさせるような企業の管理職や従業員は、参加しない、もしくは参加できる時間が無いのではないだろうか...
ちなみに”シンポジウム"とは、ある一つのテーマに対して複数の有識者が発表・議論を行うイベントのことで、古代ギリシャの「シュンポシオン」に由来するそうです。2000年以上の時を超えて、続いているスタイルなんですね。感慨深い...
さて、ではそのシンポジウムの構成ですが、3本立てになっていました。
①[基調講演] 過労死のない職場ー長時間労働とハラスメントを考えるー
(講演者:大学客員教授)
②[企業からの事例発表]宮川バネ工業株式会社 ハラスメント防止の取組
(講演者:代表取締役)
③[過労死遺族の声]
(講演者:東京過労死を考える家族の会)
①で体系的な情報が与えられ、②で防止に向けた事例、③で悲しい過労死の事例、という流れでした。※こういう場所で個人名を書いてよいのか、変に名誉棄損とかならないか、等考えて、一応個人名は伏せました。
①は、色々と背景知識がついて、個人的には有意義な講演でした。そもそも、過労死ってなんだ?精神病になって自死してしまうこと?くらいの知識で臨んだのですが、最初にそれについての回答は与えられました。2014年に「過労死等防止対策推進法」が施行されており、その中身によると、[1]過労死(長期間にわたる長時間の業務等が原因で脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞など)と、[2]うつ病、過労自死(精神的なもの)の2種類を併せて”過労死等”と表現しているようです。長時間の労働で脳出血とかどんだけ働くんだ...という感じですが、そんな極限状態まで働くことがあるんですね。話の中で特に印象に残ったのは、お医者さんは年間1900時間まで残業が許可されているという話。会社員は年間の残業許容時間が360時間と定められていますが(それが守られているかは置いておいて)、お医者さんは全然規定時間が違うんですね。とりわけ大学病院などの機関で働かれているお医者様には頭が上がりませんが、こんな環境で暮らしていたら価値観とかもまるで変わってきそうですよね。名誉ある仕事ではありますが、今の多様性の時代に小中高と勉強漬けでそのまま医者の世界に暮らし続ける人は、本当にそれでよいのだろうか。と思ったりします。余程の義務感かプライドが無ければ続けられないのでは...現在、アメリカを中心にAI競争が激化していますが、早いとこ医療の現場で実用化され、改善されるとよいと思います。話を聞いていて少し疑問に思ったのは、過労死の大きな要因の2つに、残業時間とハラスメントが指摘されており、それらは年々改善されているにも関わらず(昭和と今を比べると明らかに今の方がマシですよね)、過労死等に関する請求件数が年々増加している、ということ。この件については、質問したのですがはっきりした回答は得られませんでした。私の考えとしては、社会における”個の孤立化”がかなり影響しているような気がします。良くも悪くも、昔は同僚との時間が多く(寮生活とか飲み会とか)、上司にいびられても、”一緒に愚痴れる仲間”がいたんですね。同僚と話すので、いびられているのが自分だけではないということも知れて、安心する。精神的にも追い込まれづらい。翻って現代の新入社員は、帰ってもアパートで一人。核家族が進んでいるので、親類とも疎遠な状況にあり、心理的負荷を解放できる環境が少ないように思います。
②は40代の代表取締役の方の発表でした。ハラスメント防止策として、[1]他者への敬意を持つ組織風土を作る(人間尊重の経営)、[2]想像力とデリカシーを身に着ける、という取り組みをなされているとのことでした。その2つの方針は大いに結構と思いましたが、具体的な施策として挙がっていたのが、就業規則の整備、経営指針書発表、安全衛生の徹底、傾聴主体の個人面談、研修の実施など、会社として取り組むべき基本事項が上がっている印象があり、もう少しユニークな策があればより面白く感じれたかなと思いました。と言いつつ自身も妙案を思いつく訳ではありませんが。[1]は例えば、メンバーがお互いの長所短所を言語化して理解する、[2]は実行性は脇において、1週間共同生活、とかですかね。[1]も[2]も根本的にはビジネスの中で育まれるものというより、私生活の中で人生を通して獲得していくような性質だと思うので、難しい面はありますね。私見ですが、企業として重要なのは、倫理観の優れた人間を上にあげて、管理監督してもらう、ことだと思います。
③は心に訴えてくるものがありました。詳細は延べませんが、NTTでの過労自死です。講演者の方は、10年以上前に娘さんが自死されて以降、同じ過ちが繰り返されないようにと、講演会などで発信する活動をされているそうです。非常に残念に思ったのが、そうした活動をされているにも関わらず、娘さんが自死された同じ職場で、最近でも過労自死が発生したこと。組織風土の改善は全く見られていないんですね。私の以前の職場でも、過労自死された方がおられ、それ以降、会社としては組織風土改革を掲げて活動されているのですが、確かにその部署の雰囲気が大きく変わったかと言えば、そうではないように思います。個人の価値観を変えることは非常に難しいというのは、多くの方がご納得される主張かと思いますが、組織の価値観を変えることも同程度かそれ以上に難しいようです。
最後に、私が思う過労自死の対策です。自分の肌に合わない環境に巡り合うことは、人生の中で多くの人が経験することだと思います。そして、その社会や所属組織などの外部環境に変わってもらうことは容易ではない。そのため、やはり自分の意識を変えることが重要です。その場から逃げられるように。でもきっと、その場というのは自身がこれまで望んで努力した結果として獲得できた場である、事も往々にしてあると思います。要は、逃げたくない、この場を維持したい、という理性が働くんですね。この”拘り”をできるだけ捨て去ること、この場以外でも良いと思える考え方を持つことが、私は非常に大切な考え方だと思います。一定の拘りは人を強くしますが、あくまでもその拘りは後天的、環境依存的なもので、大抵の場合、固執しすぎると良くないことに繋がる(ほかの人にとっては理解できないものも多いと思います)。剛直ではなく、柔軟に、しなやかに。世の中で心理的負荷を抱えられている多くの方の状態が良い方向に向かうことを祈っています。